2021年5月に神奈川県川崎市多摩区にて開業した「ほまれの家登戸店(ほまれの家グループ、運営:Future WINGS株式会社)」、2022年4月に神奈川県相模原市にて開業した「インフィニピー小田急相模原(ほまれの家グループ、運営:インクルクー株式会社)」それぞれのオーナーの今野洋代表と奈良有樹代表の実体験をもとにして、就労継続支援A型事業所の開業、およびソーシャルワークシェアリングという新しい社会概念の普及までの道のりを連載でご紹介していきます。第4回のテーマは、「就労Aの仕事獲得の重要ポイント」です。
第1回「就労Aの仕事受注の誤解」
第2回「就労Aの物件探しのポイント」
第3回「人材採用と資金調達」
仕事獲得の壁
前回までにお話しした「求人募集」「資金調達」……。これらをクリアした後にやってくる課題は、「仕事獲得」です。
私たちの仲間である今野洋もまた、「ほまれの家登戸店」立ち上げにあたり、事業所の仕事獲得に奮闘しました。
就労継続支援A型事業の場合、求人したメンバーの方々に仕事をしていただき、賃金を払っていく。これがグループホーム等の事業との大きな違いです。「仕事が獲れなかったら事業が成り立たないんじゃない?」ということは、これからこの事業にチャレンジする方々にとっては、とても気になるところですよね。
今野の場合……。
「ほまれの家」というFCに加盟するという選択をしたことで、本部からのアドバイスをもらうことで何かしらの仕事はあるだろうという思いはあったにしろ、実際に自分で仕事を探してみると、やはり〝壁〟を感じる部分があったといいます。
候補となる仕事は山のように思いつくのだけど、いったいどこから手を着ければいいのかな? という思いもあったそうです。
そこでまずは、知っている〝仕事がありそうな会社〟に手当たり次第に声をかけたところ、「とりあえず話を聞くよ」というところはとても多かった。しかし、そこから先の「これで仕事が獲れた」「これで大丈夫だ」という確信までには、なかなか至らなかった。
「DMの代行の仕事が獲れそうだ」「封入の仕事があるみたいた」ということはあり、本部にも相談をしていたのですが、どうしても「これだ!」という気持ちにはなれなかったといいます。
重要なのは「仕事」よりも「人間関係」
そんなモヤモヤした思いがあるなかで本部から言われたことは……。
「『指定申請のための仕事』と『収益をあげるための仕事』は、分けて考えてみてください」
ということ。「脳を2つに分けて考えてみてください」という言い方をされたといいます。
指定申請のための仕事における重要ポイントは、とにかく「人間関係の濃い先」から当たってみることだといいます。
「とにかくメンバーの方々に仕事を与えることが先決」という考えで、見ず知らずの、実はどんな会社かもよくわからない会社でも相手にしようとしていたこともありました。
しかし、本部は「まず重要なのは〝人間関係〟」だというのです。
仕事があるか、ないかではなく、自分の話を真正面からしっかりと聞いてくれるところを相手にすればいい。見ず知らずの、一度も話したこともない相手にも片っ端から声をかけていた……これまで雲をつかむような感じで仕事獲得のために動いていた今野に、ここで初めて「相手(取引先)を選ぶ基準」ができたといいます。
電話をかければすぐに自分の話を聞いてくれる人からアプローチする。そのようなやり方に変えていきました。
「話せる人と話す」
就労継続支援A型事業を立ち上げる際、多くの人が悩んでしまう最初のハードルとなるのが、この「仕事獲得」の段階でしょう。
「仕事を探そう」と思い立っても、実際にどんなアクションを起こせばいいかわからないという方も大勢いらっしゃるようです。前述のように〝雲をつかむ〟ような動きをしてしまうわけですね。
仕事獲得で悩んでいるのならば、まずはご自身のスマホ、携帯電話に登録されている人々を洗い出してみましょう。現状としてグループホームを経営しているのならば、グループホーム事業でお付き合いのある人、営業職ならば営業関係でお付き合いのある人というように、まったく新しい世界を開拓するのではなくご自身の「今ある」お付き合いから探してみる。電話をして「こんなことをやっていて、こんなことで困っているんだよねえ」という話をちゃんと聞いてくれる人は何人いるだろうか。そんな人々があなたの話を周りに広めてくれたり、実際に仕事を出してくれるかもしれません。
「話せる人と話す」。うまくいく仕事獲得はそんな小さなステップから始まります。