2021年5月に神奈川県川崎市多摩区にて開業した「ほまれの家登戸店(ほまれの家グループ、運営:Future WINGS株式会社)」、2022年4月に神奈川県相模原市にて開業した「インフィニピー小田急相模原(ほまれの家グループ、運営:インクルクー株式会社)」それぞれのオーナーの今野洋代表と奈良有樹代表の実体験をもとにして、就労継続支援A型事業所の開業、およびソーシャルワークシェアリングという新しい社会概念の普及までの道のりを連載でご紹介していきます。第2回のテーマは、「物件探しのポイント」です。
就労継続支援A型事業所を開業するまでのステップ
就労継続支援A型事業所を開業するまでには、
・会社設立
・事業計画書の作成
・資金調達
・物件探し
・行政との事前協議
・社員、スタッフ採用
・利用者(メンバー)採用
・仕事の受注
など、多くのステップがあります。
いずれも手を抜くことのできない行程ですが、vol.1の「就労Aの仕事受注の誤解」でお伝えした仕事の受注と同様、就労継続支援A型事業所の開業のハードルになるのが物件探しです。
就労継続支援A型事業所の物件を探す
今野代表は、以下の条件で物件探しをスタートさせました。
・面積は80㎡~200㎡以下
・駅周辺
・賃料は相場を知りたいので幅広く
・階数は1~2階
・新耐震が望ましい
まずはインターネットで物件検索をしつつ、友人の不動産会社や、エリアに詳しい不動産会社を紹介してもらい、幅広くアンテナを立てて物件探しをしたといいます。
普段から、オフィス専門・店舗専門の不動産会社と接点を持っておいたり、親しい友人に紹介してもらうと良いでしょう。
フランチャイズ本部であり、ご自身でも就労継続支援A型事業所を経営されている吉田氏は、就労継続支援A型事業所に向いている物件の条件として以下を挙げています。
・事務所利用可であること
・1~2階の物件
・内装費があまりかからないこと
・消防設備など、追加コストが少ないこと
・物件オーナー(大家さん)が福祉事業に対して理解があること
「福祉事業はNG」という大家さんもいることは、これから開業を検討されている方は知っておいた方が良いでしょう。実際に、良い条件がそろっている物件を見つけられても、大家さんNGになるケースは多いようです。障がい者福祉事業に対するイメージは、人によって異なることを理解しておきましょう。
今野曰く、「物件探しは、数をあたるしかない。大家さんが一度良いと言っても、契約直前に気が変わることもあります。それでめげていては、開業できません」といいます。
物件探しの過程で実際にあったまさかの物件
今野が物件探しをしていた過程で、実際にあったケースをいくつか挙げてみます。
- まさかの物件ケース①
・2階まではエレベーター利用可、ただし3階には階段で上がらないといけない。
・降りるときは、すべて階段を利用すること。
・上記物件は、身体障がいの方には厳しいので断念。
- まさかの物件ケース②
・最寄り駅から徒歩15分と少し遠いが、内心そこに決めていた好物件。
・シャワー付きの事務所
・他の事業所の様子や作業風景を動画で大家さんにも見てもらった。
・大家さんも福祉事業に対して理解があった。
・行政や消防で物件の確認を行ったところ、必要な設備がついていなかった。
・消防に確認しても、必要な書類が見つからない…。
・調べてみると、そもそも住居として登記されている物件だったと発覚。
・事務所目的ではないので、そもそも消防設備は不要だった。
・「シャワーがある事務所っていいな」と思っていたが、そもそも住居だった。
・設備をつけてもらうわけにもいかないので、その物件は断念。
住宅用途以外の物件であれば、就労継続支援A型事業所の申請にあたり基本的に問題はないものの、住宅では申請は通りません。「事務所として載っていても、実際にはそうでないこともある」という点には注意が必要です。
また、設備要件が満たないこともあります。設備に初期コストをかけても良いのですが、経営的には負担になり、初期コストの回収にどれくらいの期間がかかるのか、それは許容範囲なのかをよく検討してから決めた方が良いでしょう。
物件確保のポイントとは
その残念な結果が出た夕方に、良い物件情報を見つけることができたと今野はいいます。最寄り駅から徒歩2分の好物件。すぐに内見に行ったものの、すでに申し込みがあり2番手だったそうです。大家さんに福祉事業への思いを熱心にアピールし、なんとか1番手に持ち込んだのは今野の情熱が伝わったからでしょう。
良い物件を確保するうえでは「即内見・即申込」がポイントで、最終的には借りないとしても、行動量とスピードが問われることは間違いありません。
物件探しが進行中の方は、アンテナを拡げ、即内見・即申込を意識して行動してみてください。